フリーソフトウェアのライセンスは、 コピーレフトと 非コピー レフトの二種類に大別することができます。コピーレフトなライセンス、例 えば GNU GPL などは、適用されたプログラ ムを改変した場合、改変後のバージョンもフリーソフトウェアにすることを義務 づけています。コピーレフトでないライセンスはこれを要求しません。コピーレ フトはすべてのユーザに対し自由を保障するので、私たちはコピーレフトをお勧 めしますが、非コピーレフトなライセンスが適用されたソフトウェアも一応フリー ソフトウェアですので、フリーソフトウェアのコミュニティにとってはそれなり に有益であるとは言えるでしょう。
コピーレフトではないフリーソフトウェアのライセンスと一口に言っても、さま ざまな種類があります。主だったところだけでも、X10 のライセンス、 X11/XFree86 のライセンス、 FreeBSD のライセンス、あるいは BSD (バークリー・ソフトウェア・ ディストリビューション)のライセンス 2 種などが挙げられます。これらのコピー レフトではないライセンスは中身としては大差ないものがほとんどで、差異といっ ても細かい言い回し程度ですが、1999 年までの BSD のライセンスだけは他のラ イセンスと決定的に違う条項を含んでおりそれが重大な問題となっています。 「迷惑窮まりない BSD 宣伝条項」とでも言うべきこの条項では、BSD ライセン スが適用されたソフトウェアが登場する広告には必ず以下に示すような通知を載 せなければならないと定めています。
3. All advertising materials mentioning features or use of this software must display the following acknowledgement: This product includes software developed by the University of California, Berkeley and its contributors.
(訳: 3. このソフトウェアの機能あるいは使用について言及している広告媒体に は、必ず以下の通知を記載すること。「この製品にはカリフォルニア大学バーク リー校とその貢献者たちによって開発されたソフトウェアが含まれています。」)
もしこの「迷惑窮まりない BSD 宣伝条項」がバークリー・ソフトウェア・ディ ストリビューションにおいてのみ適用されるというのであれば、大した問題には なりません。広告に一行加えるだけなら、現実的にはそれほど難しいことではあ りませんので。
また、BSD スタイルのライセンスを使う他の開発者が皆、BSD 宣伝条項を「カリ フォルニア大学」に言及しているくだりも含めて一言一句そのままコピーしてい れば、問題をさらに悪化させるということもないのです。
ところが、もうお察しのように、人々はそうはしなかったのです。彼らは条項が 表示を義務づけている通知文に手を加え、「カリフォルニア大学」というところ を自分が所属する団体や自分自身の名前で置き換えたりしました。結果として、 BSD ライセンスの「ようなもの」が氾濫し、載せなければならない文面もまたそ の数だけあふれかえるということになってしまいました。
こういったプログラムを多く集めて一つのオペレーティングシステムにまとめる という場合、これが深刻な問題となります。考えてもみてください、もしあるソ フトウェアシステムを宣伝するのに、システムに含まれるソフトウェアの作者と して、個人なりグループなりの名前を名前一つにつき一種類、全部で計 75 種類 の通知文を表示しなければならないなんてことがあったら、一体どういうことに なるでしょうか。一面全部そのためだけに使わないかぎり広告が出せなくなって しまいます。
こういう風に書くと、憶測に基づいたばかげた話のように聞こえるかもしれませ んが、実は本当に起こっている事実なのです。NetBSD を扱った広告には、必ず 千差万別の多数の通知文が長々と一覧で載っています。私が 1997 年に見たマニュ アルの中で数えてみたところ、なんと 75 種類もありました。現在に至るまでこ のリストが膨張を続けていても、私は全く驚きません。
この事態を好転させるため、暇があると私は BSD スタイルのライセンスを使っ たことがある開発者たちと話し、宣伝条項を外してくれるよう頼むことにしてい ます。1996 年ぐらいに私はFreeBSD の開発者たちとこのことについて議論し、 彼らは自分たちが書いたソースコードすべてから宣伝条項を削除することを決め ました。1998 年 5 月、ユタ大学の Flick の開発者たちもまたこの条項を撤廃 しました。
カリフォルニア大の Hal Varian 学部長がこの問題を取り上げ、学部当局と 交渉してくださいました。そして 1999 年 6 月、二年間の議論の末、カリフォ ルニア大はBSD のライセンスからこの条項を削除したのです。
そんなわけで、現在宣伝条項を含まない新しい BSD ライセンスが存在していま す。不運にも、これは宣伝条項の遺産を削減することにはなりません。BSD の一 部分ではない、多くのパッケージのライセンス中には似たような条項が依然とし て残っています。BSD 用ライセンスの変更は古い BSD ライセンスを真似た他の パッケージには何の影響も及ぼしません。それらを書いた開発者たちのみが変更 できるのです。
しかし、以前彼らは BSD の流儀に従ったわけですから、今回のバークリーのポ リシーの変更を知れば彼らの何割かは自分のライセンスを変えてくれるかもしれ ません。変更してくれるよう彼らに頼んでみることは有益です。
ですから、もしあなたのお気に入りのパッケージが依然宣伝条項付きのBSD ライ センスを使っているなら、そのパッケージの管理者にこのウェブページを見てラ イセンスの変更を考えてくれるよう頼んでみて下さい。
またあなたがプログラムを非コピーレフトなフリーソフトウェアとして発表した いならば、宣伝条項は使わないようお願いします。他のパッケージ -- それらに は古いバージョンのライセンスが含まれているかも知れません -- から BSD ラ イセンスをコピーする代わりに、XFree86 からライセンスをコピーするようにし てください。
また、やっかいな宣伝条項付きの古い BSD ライセンスのことを特に言っている のでは無い限り、ライセンスを「BSD スタイル」と呼ばないことでもこの問題へ の認知を広めることができます。
お分かりのように、すべての非コピーレフトなフリーソフトウェアライセンスは 「BSD ライセンス」である、というような言い方をすると、非コピーレフトなフ リーソフトウェアのライセンスを使おうと考えている新入りのフリーソフトウェ ア開発者たちはライセンスを BSD から取ってくれば良いと思い込んでしまうか もしれません。彼あるいは彼女は、宣伝条項付きのライセンスを、確固とした信 念からというよりは、単にデフォルトだからということでコピーして適用してし まうかもしれません。
もし何かの場で非コピーレフトのライセンスの具体的な例を挙げたいということ があり、特にご自分の好みというものもなければ、特定の問題がないライセンス をサンプルとして選ぶようにしてください。例えば、「XFree86 スタイル」のラ イセンスの使用を提案すれば、あなたはそこらの BSD ライセンスを真似させる という危険を冒す代わりに、人々に XFree86 を手本とし、はっきりと宣伝条項 を避けるよう奨励することができるでしょう。
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翻訳は八田真行 <mhatta@gnu.org> が行いました。
Updated: 3 Jan 2001 mhatta