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Brave GNU World - 第32号
Copyright © 2001 Georg C. F. Greve <greve@gnu.org>
日本語訳: IIDA Yosiaki <iida@brave-gnu-world.org>
許可声明は以下のとおり

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Brave GNU Worldの新しい号へようこそ。

プロジェクトGanesha

このプロジェクトの名前であるGanesha [5] は、 ヒンドゥー語で知恵と繁栄を意味します。 プロジェクトの目標は、 ネパールのShree Bachhauli中等学校に寄付されたコンピュータのGNU/Linuxネットワークを子どもたちが構築し、 システムの利用、 管理方法の学習の手助けをすることです。 プロジェクトのアイデアは、 Shree Bachhauli中等学校で教鞭をとるKuma Raj Subediが滞在した2か月の間に成長したものです。

ネパールの子どもたちの状態は、 とても大変なものです。 仕事があって、 ふつうに学校に行くことさえままなりません。 しかし教育ぬきでは、 未来への見通しをもつことができず、 そのまた子どもたちが働かなければならないはめになります。

プロジェクトGaneshaは、 情報時代に参加でき、 学校にいられるよう、 子どもたちにコンピュータの使い方を教えることで、 この悪循環を断ち切ろうとします。

まずは必要な財源とコンピュータを調達し、 ネットワークの設定される場所である ネパールに輸送、 そしてソフトウェアのインストール、 という予定になっています。 その後、 第1学級の子どもたちがマシンの使い方を教わり、 次の子どもたちがコンピュータを使う手助けをします。 コンピュータの基本操作の他、 ウェブ・プログラミング、 データベース、 ネットワーク、 グラフィックスが科目になります。

財政援助の他、 プロジェクトに必要なのはネットワーク・ケーブル、 コンピュータ、 ネットワーク・カード、 ビデオ機材、 プリンタなどなどです。 PHP、 ネットワーク、 MySQL、 シェル・スクリプトなどの英語の書籍も役立つでしょう。

豊かな国々では、 コンピュータはどんどん時代遅れになり、 捨てられてしまいます。 その代わり、 世界中の子どもたちに展望を持たせるために使うことは、 私にとって、 より良い使い方に思えます。

同様の問題は、 もちろん、 あちこちでおきています。 そのためプロジェクトGaneshaでは、 概念を伝え、 参加を促そうとするようなFree Softwareのプロジェクトをさがしています。

人々が自分の面倒を見られるよう援助する同様のプロジェクトを始める人のためのハウツーを作るために、 GNU FDLの下で、 経験、 操作手順、 アイデアをプロジェクト貯蔵庫のようなものに寄せ集めるのは、 有益かもしれません。

Logideeツール

Raphel HertzogとStephane Cassetは、 Logideeツール・プロジェクト [6] の作者です。 プロジェクトの目標は、 講義資料の執筆と、 そこから印刷用文書やウェブ・ページへの変換を簡素化することです。

講義資料はXMLの文書として書き、 それをプレゼンや練習用の完全な文書に変換するわけです。 Logideeツールはそのため、 とあるXML DTDと、 若干のXSLやメークファイルを使います。 またこのプロジェクトでは、 XSLTの処理にGNOMEプロジェクトのxsltprocを使っています。

利用者として典型的なのは、 学科や講義の講師をする人たちです。 特に本職の教師ならば、 このプロジェクトはまさにそれ専用に書かれたものですから、 一目見るべきでしょう。

プロジェクトは当初、 フランスの会社Logideeがおこしました。 これは、 Free Softwareの本職トレーニング独自の要求を満たす専門会社です。 Logideeツールは他の人々にも役立つ、 と判明し、 GNU General Public LicenseとGNU Free Documentation Licenseの下でリリースされることになりました。

文書はいまだ弱点ですが、 フランス語でならば入手は可能です。 英語への翻訳は必要ですが、 予定はありません。

HTMLDOC

HTMLDOC [7] は、 前のプロジェクトとの類似点があります。 なぜならこれも文書をひろく入手可能にしようとしているからです。 これもまた、 とある会社により開発され、 GPLの下でリリースされています。 この会社は、 Easy Software Products (ESP) といいます。

HTMLDOCは文書ソースの作成形式として、 HTMLを利用しています。 これは索引つきのHTML、 PDF、 PostScript (レベル1、2、3) を生成するのに使います。 この機能のほしかったKurt Pfeifleは、 HTMLにあるリンクがPDF文書ではハイパーリンクとして保存されることを、 必殺機能とみています。 これを使おうとする人は、 あの独占的なAcrobat Readerを使う必要はありません。 Freeなプロジェクトxpdfが使えますし、 Freeなプロジェクトがもっと使えるようになるという、 もっともな期待があります。

"Linux Documentation Project"は、 HOWTOをPDFの形式にするのに、 かなり前からHTMLDOCを使っています。 これは、 HTMLDOCが日常活用にむいているといっても大丈夫なことを示しているように見えます。

最近リリースされた1.8.14版では、 128ビットで文書を暗号化できるAcrobat 5.0 (PDF 1.4) と互換なファイルのサポートが追加になりました。 また使用メモリーもおさえられ、 表の表示にかかわる問題も解決されました。

HTMLDOCの変換速度については、 Kurt Pfeifleの500 MHz Pentium IIIで最高に圧縮した場合、 17枚のスクリーンショットと、 PostScriptやPDFで102ページある付属のハンドブックを、 PostScriptへは4.0秒、 PDFへは6.2秒ということです。

HTMLDOCで有効なもうひとつのオプションは、 ウェブ・ページからPDFへの変換時のプロクシーや、 暗号化された安全な経路での遠隔アクセスです。 シェル、 Perl、 PHP、 C、 Javaへの束縛のおかげで、 ウェブ・ページのアドレスを入力にとり、 できあいのPDFドキュメントを戻す「ポータル」のようなことができます。 Easy Software Productsのホーム・ページ [8] にこの例を見ることができます。

HTMLDOCをローカル・マシンで使うときは、 "Fast Light Toolkit" (FLTK) [9] ベースのGUIや、 コマンド行で制御できます。 後者の場合、 処理の自動化用にバッチでも使えて、 嬉しいわけです。

HTMLDOCプロジェクトでできることの印象を伝えるための機能としては、 これらはほんの序の口です。 プロジェクトはすでにかなり成熟しており、 PDFのページをめくるときの特殊効果を定義できるだけでなく、 表題ページ、 背景画像の定義、 任意に選んだウェブ・ページから「PDFブック」の作成もできます。

それに加え、 HTMLDOCはかなり移植性があります。 GNU/Linuxだけでなく、 IBM-AIX、 Digital UNIX、 HP-UX、 *BSD、 OS/2、 Solaris、 SGI-IRIX、 MacOS X、 MS Windows 95/98/ME/NT4/2000でうごきます。

今後の開発計画には、 XHTMLと拡張スタイルシートのサポート、 (現状では左揃え段落に変換されてしまう) 左や右に揃えたHTMLソース段落の変換があります (原注: これを書いた後、 この問題は解決されました)。

だからといって、 HTMLDOCを見てみたり、 PDF-O-Matic [8] を試したりするのをやめたりはしない方がよいでしょう。

GNU Passwords On Card

Henning KoesterによるPasswords On Card (POC) プロジェクトは、 最近GNU Projectに参加しました。 この記事を書いている時点では、 POCのGNUウェブ・サイトはまだできていませんので、 今は古いホーム・ページ [10] をあげておくことにしますが、 そのうち標準的なGNUソフトウェア・ディレクトリー [11] に追加されるはずです。

GNU General Public License下のこのプログラムは、 スマートカード上のパスワード管理機能を提供します。 5つより多くのパスワードをおもちの読者の皆さんなら、 その効用は明白でしょう。 特にそのうちの一部が年に1、 2度しか使わないのであれば。

今までは、 たくさんの人たちがパスワードを紙に書いたり、 ハードディスクに保存したり、 パスワードを使い回したりしてきました。

この手のことは誰でもいけないと知っているのですが、 多くのパスワードをちゃんと覚える、 という問題を解く方法は、 知りませんでした。 パスワードとその説明をいっしょに暗号化してスマートカードに保存することで、 GNU POCは、 この問題への解を提供します。

現在GNU POCはI2Cメモリー・カードだけをサポートしていますが、 できるだけ多くのカードをサポートする予定です。 GNU POCを援助する方法のひとつは、 サポートできるようにするためのカードの提供です。

次のプロジェクトは、 以前このBrave GNU Workedの願望リストに入れておいたものですが、 こうして発表できることを嬉しく思います。

Sketch

今いちばん進んだFree Softwareのベクター描画プログラムは、 Sketch [12] だといっても過言ではないでしょう。

このプロジェクトは、 当初からの中心的開発者であるBernhard Herzogが1996年に始めました。 Sketchは、 まあまあ安定していて、 連続的な変色充填、 別画像への溶明、 溶暗、 転移、 マスキングといったすすんだ機能をいくつかサポートしています。 テキストや曲線といった、 あらゆるベクター・オブジェクトの変換もできます。

それ以外の魅惑的な機能としては、 誘導線レベルへの移動で、 たいていのオブジェクトを「曳行」誘導線 ("magnetic" guide line) として使用できる能力があります。

Sketchは、 すでにGNU/LinuxTag誌最新号のGIMPバッヂで使われています。 これはSimon Budigによるもので、 当然Sketchを使っています。 ボルドーでの第1回Libre Software Meetingのポスターも、 やはりSketchによるものです。

SketchはPythonのプラグインとスクリプトで簡単に拡張でき、 またSketch自体はPythonで書いてあるので、 Sketchのあらゆるオブジェクトは、 利用者のスクリプトから全面的にアクセス可能です。 またプラグインを通じて、 新しいオブジェクト型や入出力フィルターを追加できます。

ベクター描画プログラムには、 オブジェクト指向のアプローチが自然な選択であることや、 新しい概念の実験が、 Pythonの柔軟さでCやC++よりかなり簡単になることから、 PythonはBernhard Herzogのお得意言語です。 そのためSketchはほぼ全面的にPythonに依存しており、 一部のモジュールだけがCで書いてあります。

欠落部分の中には、 オブジェクトの座標や大きさの直接手入力同様、 制限のあるテキストのサポートがあります。 ですが、 このような問題は、 きっとそう遠くない将来に解決されるでしょう。

Sketchは今、 TkinkerからGTKへの移行中で、 この移行の完了が、 次の安定版 (0.8) の第1目標です。

長期的目標は、 Sketchを独占的な解に対抗できる完璧なベクター描画プログラムにすることです。 しかしこれを達成するには、 入出力フィルターを完成した上で拡張する必要があり、 また前述のテキスト・サポートも改良の必要があります。 そして、 透明効果、 ベクター充填パターン、 CMYK、 色制御のような新機能も計画中です。

というわけで、 まだまだかなりの待ち時間があり、 Bernhardには援助が必要です。 フィルターからsketchの開発をすすめるとよい、 というのが彼の持論です。 というのも、 それはSketchの内部知識が必要ないからです。

さらに文書がフランス語で、 これは英語に翻訳する必要がありますし、 ウェブ・ページへの援助も同じくらい歓迎です。

しかし、 Sketchの開発支援が可能なのは、 まあまあ古典的といえるボランティアの作業だけではありません。

Bernhard Herzogは、 ドイツのFree Software専門会社、 Intevation [13] で働いています。 Intevationは、 ふだんの職場での勤務時間中、 できるだけBernhardにSketchに取り組ませるようにしていますが、 フルタイムで作業させられるほどの余裕はありません。

ですので、 Intevationは、 10米ドルきざみでSketchの開発時間を買うことのできるようなオンライン・アカウントをホーム・ページ上につくりました。 これは寄付と考えるべきではなく、 むしろSketchのもたらす将来の可能性への投資と考えるべきでしょう。

同様のアプローチは、 よく「チップ文化」("tipping culture") といいます。 つまり、 このサービスが明日も続くはずだと理解した上で、 容認できる範囲での自発的支払いなわけです。

ですので、 もしあなた自身にSketchを積極的に開発する時間やノウハウがなければ、 Bernhard HerzogがSketchにかける時間をあなたが買うことで、 彼にやらせることができます。

Sketchに新しい機能を追加するよう頼まれたとき、 ありえそうな特許の問題を指摘しなければならない、 とBernhardはいいます。

Adobeは、 PDF 1.4の透過機能や、 1.3以降のPDFの一部について、 米国のソフトウェア特許を若干もっています。 Adobeは今のところ、 当該のアルゴリズムがPDFの処理に使われる、 という前提で、 特許料を請求していません。 しかしSketchの主目的はPDFの処理ではないため、 Sketchがこういう機能を実装することはできないかもしれません。

同時に、 "Scalable Vector Graphics" (SVG) 形式が、 Free Softwareに特許関連の問題を投げかけるのかどうかも、 はっきりしません。

したがって、 米国では商業目的でSketchの機能の少なくとも一部が使えないかもしれない、 ということがありえます。 こうした特許が有効なヨーロッパでも、 同じことが言えるでしょう。

もしあなたがまだEurolinux-Petition [14] に署名されていないのであれば、 ヨーロッパでのソフトウェア特許に対する運動を支援するために、 できるだけ早くそうするべきです。

今日はここまで

この質問はよく繰り返されるので答えておきたいのですが、 このBrave GNU Worldでは、 GNU Projectの一部であってもなくても、 すべてのFree Softwareを記事にとりあげます。 どんなFree Softwareプロジェクトも記事にできます。

というわけで、 今日はこのへんで。 いつもどおり、 みなさんからのコメント、 質問、 お考え、 新しいプロジェクトの紹介はいつものアドレス [1] へメールにてお願いします。

情報
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[3] GeorgのBrave GNU Worldのホーム・ページ http://brave-gnu-world.org
[4] 「We run GNU」イニシアチブ http://www.gnu.org/brave-gnu-world/rungnu/rungnu.ja.html
[5] 「プロジェクトGanesha」のホーム・ページ http://www.ganeshas-project.org
[6] Logidee-toolsホーム・ページ http://www.logidee.com/tools/
[7] HTMLDOCホーム・ページ http://www.easysw.com/htmldoc/
[8] HTMLDOC PDF-O-Matic http://www.easysw.com/htmldoc/pdf-o-matic.php
[9] Fast Light ToolKitホーム・ページ http://www.fltk.org
[10] GNU Passwords On Cardホーム・ページ http://poc.crackinghacking.de
[11] GNUソフトウェア・ディレクトリー http://www.gnu.org/software/
[12] Sketchホーム・ページ http://sketch.sourceforge.net
[13] Intevationホーム・ページ http://www.intevation.de


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日本語訳: 飯田義朗

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Last modified: Tue Oct 9 18:18:11 CEST 2001