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Brave GNU World - 第27号
Copyright © 2001 Georg C. F. Greve <greve@gnu.org>
日本語訳: IIDA Yosiaki <iida@brave-gnu-world.org>
許可声明は以下のとおり

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GeorgのBrave GNU Worldへようこそ。 前号 で書いたように、 学校でのFree Softwareは潜在的にとても面白いので、 今月はその話題から入ろうと思います。

学校用のGNU/Linux端末サーバー

"GNU/Linux TerminalServer for Schools"-Project [5] は、 GNU/Linuxベースの端末サーバーのインストールや管理用の簡単な手段を提供しよう、 というプロジェクトです。

背景についての注: 端末サーバーとはシステムの全機能を、 各自の作業用マシンを単なる端末として使う数人の利用者に提供しようとするもので、 これには数々の長所があります。

まず第1に、 古いハードウェアが端末として使えます。 486でも十分でしょう。 ですから費用対効果がとてもよいのです。 またシステム管理者の管理する必要があるのは単一のシステムですから、 かなりの時間の節約になります。 集中構造のおかげで、 バックアップも簡単です。

プロジェクトは Hans-Josef Heckの提案による "Freie Software und Bildung e.V." (「Free Softwareと教育協会」) [6] のメーリング・リストから始まりました。 2000年11月の大会で、 このプロジェクトの推進が決議されました。 プロジェクトは主にChristian Seligの管理下、 Georg BaumとJason Bechtelがこれをささえています。 Jasonは、 "GNU/Linux TerminalServer for Schools" の中心機能をもつ "Linux Terminal Server Project" (LTSP) [7] からチームに参加しました。

プロジェクトの主課題は、 ソフトウェアのパッケージを作ることではなく、 むしろ楽なインストールやシステム構築にあります。 これ専用にPerlで作ったwebminモジュールで管理をおこないます。 インストール用のCDの作成が計画中です。

CDと構築にとって決定的なことは、 配布物件に無関係なことと、 国際化です。 フランス語 (Joel Amoros訳)、 スウェーデン語 (Michael Habbe訳)、 スペイン語 (Angel Eduardo Porras Meza訳) への翻訳はすでにあり、 さらなる翻訳も大歓迎です。

Christianによれば、 このプロジェクトの特別な強みは、 これが特殊な解なのではなく、 むしろ共通問題にたいするやさしい解であることにあります。 その一方、 一定の利用者の支援に必要なハードウェアや、 ネットワーク帯域幅の統計値のないことが、 彼の目にうつる弱点です。 LTSPには多くの利用者がいますが、 独占的なベンダーがするような権威ある数字を決定するのは、 困難です。 そのての数字は往々にして大雑把な推定なのですが、 エンド・ユーザーにはかなり説得力をもって見えるものです。

全配布物件で共通のインストール用CDを作成することが、 短期的目標です。 その目標にむけ、 管理プログラムの弱点やCDの検査を、 喜んでやってくれるβテスターが、 引き続き必要です。 学校でのFree Softwareの活用をひろげるため、 長期的には、 他の教育的ソフトウェアのCDも入れよう、 という計画もあります。 Ofsetのホーム・ページ [8] には、 これについての情報がもっとあります。

LTSPと管理モジュールはGNU General Public Licenseの下でリリースされています。 文書のライセンスは明白ではありませんが、 FSF [9] の受理するものなら受理可能と認められます。 個人的には、 このプロジェクトでGNU Free Documentation License (FDL) の使われるのが見てみたいところです。

次は、 以前、 紹介したプロジェクトの最新情報です。

GNU HaliFAX

第21号でGNU FaXileプロジェクトについて書きました。 これはGNU Projectにおいて、 完結した快適なFAX環境の作成を目標にするプロジェクトです。

このプロジェクトは今やGNOME-GFaxと合流し、 GNU HaliFAX [10] と名前を変えました。 予定していた機能 (第21号 [11] 参照) のうち、 GNU HaliFAXビューア (ghfaxviewer) とGNU HaliFAXセンダーができています。

FAXビューアは既になかなかのもので、 使い勝手のよいGUI、 アンチエーリアス、 改良版ズーム・アルゴリズムをそなえ、 FAXの印刷ももちろんできます。

プロジェクト管理の部分同様、 SANEとGNU HaliFAXの結合のようなことも計画中で、 管理者のWolfgang SourdeauとGeorge Farrisには、 しなければならない作業がまだたくさんあります。 ghfaxviewerのドイツ語訳などgfaxについて色々なことをしたTill Bubeckは、 2人を大きく支援しています。 当初のドイツ語訳はThomas Bartschies、 中国語訳はKevin Chen、 ポーランド語訳はZbigniew Baniewskiによるものです。

WolfgangとGeorgeとがプロジェクトに集中できるようになるので、 金銭的援助は、 非常に歓迎されます。

読者の多くにとって次のプロジェクトは直接の関係はないでしょうが、 それでも確かにものすごく興味深いものです。

GOSSIP

Marius Vollmerによる "GOSSIP Simulation Environment" [12] は、 通信工学やデジタル信号処理で使う模擬実験環境の作成に取り組んでいます。 これは、 GNU ProjectでのScheme実装であるGuileの拡張として、 実装されています。

プロジェクトは、 4つの基本部分からなります。 それは、 模擬エンジン (gossip-sim) 、 データ概要捕捉ツール (gossip-ed) 、 支援ライブラリー一式 (gossip-lib-*) 、 VHDLファイルの読込みができるようになる拡張 (gossip-vhdl) です。

gossip-simの実行するSchemeプログラム、 というテキストの形式で、 模擬実験を記述します。 gossip-simの動作は現在、 同期的データフローでだけで、 非同期的データフローや離散事象は扱えません。 しかし、 必要とされた模擬エンジンやその相互作用は、 Marius Vollmerには、 とても低い優先度しかありません。

1.0リリースはほぼ準備ができていて、 予定していた全機能は既にgossip-simに実装され、 他の部分もほぼ実用にたえるものです。 作者は模擬実験技術の専門家ではないため、 特に模擬エンジンについての建設的な批評がほしいそうです。

彼の目からすると、 GOSSIPは、 その主な性格として、 簡単な構造と柔軟性のあるパワフルなツールを提供するべきです。 一部のソフトウェア・パッケージが利用者に恩着せがましくするやり方は、 彼の特に気に入らないところであり、 むしろ彼は、 利用者に自分の要求を決める機会を与えるのです。

最大の問題は、 ニワトリと卵のそれのように明らかなことです。 GOSSIPはまだ若いので、 模擬実験モジュール群が足りず、 利用者が書かなければならないのです。 しかしこれは、 GOSSIPを使って初めて書くことになり、 そのため良い模擬実験モジュール群がもっと必要になるのです。

このプロジェクトは、 自由に交換される知識、 そしてFree Softwareをとおしたその起源の追跡可能性、 という科学の原理を、 デジタル信号処理の分野で強固にする可能性をひらくものです。

ですから、 このようなソフトウェアをお使いの皆さんにぜひGOSSIPを使っていただくよう、 私は訴えたいのです。 COSSAP、 SPW、 Cocentric SystemStudioといったパッケージの経験者は誰でも、 既存のモジュールの状態遷移や移行を大幅に単純化したGOSSIPでの概念は、 もうおなじみもののはずです。

さて、 次のプロジェクトは最初、 とても抽象的に思うかもしれませんが、 とても重要な課題を扱うものです。

Jude

Jude [13] は、 Massimo Zaniboniの学位論文の一部です。 イタリアはボローニャ大学の化学部にあるCiamician水晶工学研究所用に、 「作業グループ・アプリケーション」を作成するため、 彼はそれを開発したのです。 幸運にも、 彼はそれを全部GNU General Public Licenseの下におきました。

基本的にJudeは、 「データ管理」、 「作業グループ・アプリケーション」分野での問題解決を可能にするアプリケーション開発用の枠組み、 ツールキットなのですが、 利用者、 開発者ともに簡単に利用することができます。 サーバー側はオブジェクト指向モデルに基づき、 利用者の側はエージェントをベースにした複合文書というかたちをとります。

このような解をかたちづくる技術としては、 リレーショナル・データベース、 オブジェクト指向データベース、 文献管理システム、 XML文書、 エージェントベースのシステム、 Javaがおなじみです。 とはいえ、 このような技術を1つまたは少しだけ使う場合は特に、 望ましい構造の実装で問題をかかえがちです。 Judeは、 これらの技術の長所を全部、 単一の一貫した開発環境で、 提供しようとしています。

Judeで機能を完備した作業グループ・アプリケーションができるようにする場合、 開発者は、 問題を単純化した抽象表現を、 高水準の宣言型オブジェクト指向言語で入力することになります。

これにより、 開発者は既存の多くのモジュールにアクセスでき、 昔のコードを簡単に再利用できます。 利用者は、 構造化された情報と文書へのインターフェースとして、 JavaとSwingに基づいた、 一貫性ある、 使いやすい環境を見るだけになります。

現在Judeはまだα段階で、 インストールも大変ですので、 ふつうの利用者は試してみない方がいいでしょう。 したがって、 製品活用できるように支度するのがMassimoの次の目標です。 その後で彼が拡張しようと思っているのは、 トランザクション管理、 暗号化、 オフライン機能、 PDAのサポートです。 しかし、 そこまでいくにはまだまだ長くかかるでしょう。 援助やスポンサーは非常に歓迎ですので、 もし時間をさくほど興味深いプロジェクトだと思われたら、 Massimoに連絡をとってみてください。

これで今月は十分抽象的だと思うので、 皆さんが日々お使いのあの分野の話題に行きましょう。 そう。 ほかでもないWebです。

HyperBuilder

HyperBuilder [14] は、 100ページ以上の大きくて静的なウェブ・サイトを管理するツールをつくるために、 最初にAlejandro Forero Cuervoが始めたプロジェクトです。

これには、 情報の再利用可能性が設計上の決定的要因です。 というのも、 同じヘッダーやフッターを200ページ分、 手を入れるというのは、 うんざりする話だからです。 大きくて静的なウェブ・サイトの管理にHyperBuilderを選ぶのもいいのですが、 真の強みは今や動的なところにあります。

HyperBuilderはウェブサーバーでうごき、 要求に応じた文書の解析をし、 最大のパワーを発揮します。 そのためにはApacheのモジュールとして使うのが最高ですが、 CGIスクリプトとしてうごかすことも可能です (ただし遅くはなりますが)。

ウェブ・サイト用のファイル自体は一種の拡張HTMLで書かれることになり、 理解も編集も容易です。 HyperBuilderのモジュールは、 HTMLのタグのようにして入れられます。 若干の標準的な問題用のモジュール、 たとえば伝言板、 投票、 SQLバックエンド、 利用者認証は、 すでに実装済みです。 また、 PerlやScheme (Guile) のコードを直接、 もしお望みなら両方とも、 ファイルに入れることもできます。

HyperBuilderには、 プログラマ以外にも大きな利点があります。 使い方をおぼえるのがとても簡単だからです。 たとえば、 <p>Visits: <counter src="file" id="counter_id" inc="1" show="yes"></p> という行だけで、 ウェブ・ページにカウンタを入れることができます。 さもなければ、 自分でカウンタを書くことになるでしょうが、 これは上の1行よりもっと長くなります。 または、 誰かの書いたそれ用のCGIスクリプトをダウンロードし、 ウェブ・ページに組み込むことになるでしょう。 こうしてHyperBuilderでCGIスクリプトをたくさん消すことができます。

HyperBuilderの利点はプログラマにもあります。 あるアプリケーションのウェブインターフェースを作る場合、 HyperBuilderモジュールで実装をするのは、 まさしくいい考えです。 そうすれば、 利用者は皆、 自分の趣味嗜好にあわせてインターフェースを構成できます。 開発者はレイアウトのことは忘れ、 インターフェースやグラフィック上の詳細ではなく、 機能に集中もできます。

HyperBuilder自体は、 性能上の理由によりPOSIXスレッドを使い、 GNU General Public Licenseの下、 Cで開発されています。 これはUnixシステムでうごき、 GNU/Linux、 Solaris/SunOS、 *BSD、 Irixといった色々なバージョンでテストされています。 ウェブ・ページの動的な生成には、 Perl、 C、 Schemeを使うことができます。

HyperBuilderは、 機能の上では十分です。 現在の最大の問題は、 文書のないことと、 他の問題を見付けてくれる利用者が不十分だということです。 Alejandroは文書のないことを特に不満に思っていて、 ボランティアにたいしてプロジェクトの内部についてのコーチを買って出ています。

今後の計画はさらにモジュールを書くことで、 XMLのファイルをページにするモジュール、 XML-RPC経由で通信するモジュール、 GIMPの全機能を含むモジュール、 RubyやJavaのモジュールが、 それに当たります。

HyperBuilderに基づいた"FuWeb"という完全なポータルサイトがすでにあり、 GNU General Public Licenseの下、 入手可能になっている、 ということを一言、 書き添えておかなければならないでしょう。 ですので、 独自のプロジェクトでの使用も容易なはずです。

このプロジェクトでできることの説明は、 もうこれで十分でしょう。 おすすめできることはあと、 前述のFuWebポータルの例もあるホーム・ページ [14] をごらんいただくことですね。

Brave GNU Worldの舞台裏

最後に、 Brave GNU Worldがまた別な言語に翻訳されることになった、 というお知らせがあります。 Brave GNU Worldの仲間に加わったFernando Lozanoと、 Hilton Fernandesのおかげで、 Brave GNU Worldは、 ポルトガル語でも出るようになりました。 どうもありがとう、 みんな!

このコラムを始めたときは予想だにしていなかったのですが、 これで7つの言語 (ドイツ語、 英語、 フランス語、 日本語、 スペイン語、 朝鮮語、 ポルトガル語) になりました。

さらにGero Takke、 Michael Scheiba、 Steven R. Bakerを仲間に迎えたいと思います。 この3人は、 Brave GNU Worldのウェブ・サイトを引き継いでくれました。 支援を買って出たHyperBuilderの作者であるAlejandro Forero Cuervoとともに、 今後のBrave GNU Worldウェブ・サイトを再検討してくれるでしょう。

…今日はこのへんで

さて今月はこれでいいでしょう。 若干の興味深い入力が済んだと思うので、 いつもどおり、 アイデア、 フィードバック、 コメント、 プロジェクトの紹介のつまった山のようなメールをいつものアドレス [1] 宛、 期待しています。

情報
[1] 意見、 批判や質問は Brave GNU World <column@brave-gnu-world.org> まで
[2] GNUプロジェクトのホーム・ページ http://www.gnu.org/home.ja.html
[3] GeorgのBrave GNU Worldのホーム・ページ http://brave-gnu-world.org
[4] 「We run GNU」イニシアチブ http://www.gnu.org/brave-gnu-world/rungnu/rungnu.ja.html
[5] 学校用のGNU/Linux端末サーバーのホーム・ページ http://termserv.berlios.de/
[6] Free Softwareと教育協会のホーム・ページ (ドイツ語) http://fsub.schule.de/
[7] Linux Terminal Server Projectホーム・ページ http://www.ltsp.org/
[8] 「Ofset」 (Organization for Free Software in Education and Teaching) ホーム・ページ http://www.ofset.org/
[9] FSF - license list - documentation licenses http://www.gnu.org/philosophy/license-list.html#DocumentationLicenses
[10] GNU HaliFAXホーム・ページ http://www.ultim.net/~wolfgang/gnu_halifax/ghfv.html
[11] GeorgのBrave GNU World - 第21号 http://www.gnu.org/brave-gnu-world/issue-21.ja.html
[12] GOSSIP Simulation Environmentホーム・ページ http://gossip.sourceforge.net/
[13] Judeホーム・ページ http://jude.sourceforge.net/
[14] HyperBuilderホーム・ページ http://bachue.com/hb/

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Copyright (C) 2001 Georg C. F. Greve
Japanese translation by IIDA Yosiaki

日本語訳: 飯田義朗

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(著作権と上の許可告知のある限り、 この写しの逐語的な複製をとって、 配布する許可を認めます。)

Last modified: Tue May 15 15:43:13 CEST 2001