あなたの次のライブラリにはライブラリGPLを適用するべきでない理由

Richard Stallman

この文章は1999年2月に書かれたものです。

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GNUプロジェクトがライブラリに適用しているライセンスは、主なものとして 二つあります。一つは GNU ライブラリGPL で、もう一つはふつうのGNU GPL です。ライセンスの選択は大きな違いをもたらします。すなわち、ライブラリ GPLを適用すると、そのライブラリを独占的なプログラムで使うことを許可す ることになり、一方ふつうのGPLを適用すれば、そのライブラリはフリーなプ ログラムでのみ利用可能となるのです。

あるライブラリに対してどちらのライセンスが最良かは戦略の問題で、置かれ た状況のわずかな違いによって大きく変わります。今のところほとんどのGNU ライブラリはライブラリGPLで保護されていますが、これは私たちがせっかく あるこれら二つの戦略のうち一つしか使っておらず、もう一つを無視している ということに他なりません。ですから、現在私たちは、今後はより多くのライ ブラリをふつうのGPLの下で発表するようにしたいと考えて います。

独占的なソフトウェアの開発者たちには資金力という強みがあります。そこで、 フリーなソフトウェアの開発者たちも、お互いのために、彼らに対する優位を 確保する必要があるのです。ふつうのGPLをライブラリに適用すれば、フリー なソフトウェアの開発者たちは独占的な開発者たちに対して優位に立つことが できます。フリーな開発者には利用でき、一方独占的な開発者たちは使えない ライブラリという強みが手に入るのです。

どのライブラリにもふつうのGPLを適用するのは、都合の良いこととは限りま せん。いくつかの場合においては、ライブラリGPLを適用した方が状況を好転 できると考えられる理由があります。最も一般的なケースとしては、そのフリー なライブラリの機能が他の代替ライブラリによってすでに独占的なソフトウェ アでも利用可能であるという場合があります。こういう場合、そのライブラリ はフリーソフトウェア界にいかなる特定の優位ももたらすことができませんか ら、そういったライブラリにはライブラリGPL を適用する方が良いでしょう。

これが、私たちがGNU CライブラリにライブラリGPLを適用している理由です。 結局のところ、他にもCライブラリはたくさん存在します。私たちのライブラ リにGPLを適用したところで、独占的なソフトウェア開発者たちを他のを使う よう駆り立てるだけのことでしょう。彼らにとってはノープロブレム、しかし 私たちにとっては問題大ありです。

しかし、GNU Readlineのようにライブラリが著しくユニークな機能を提供する 場合、話は全く別物です。Readlineライブラリは対話型プログラム向けに入力 の編集とヒストリ機能を実装していて、これは他で一般的に利用可能な機能で はありません。これをふつうのGPLの下で発表し、その使用をフリーなプログ ラムに限定することは、私たちのコミュニティにたいへんな後援となります。 少なくとも一つのアプリケーションプログラムが、特にそれがReadlineを使う 必要があったということから今日フリーソフトウェアと成っています。

もし私たちがGPLによって保護された強力なライブラリのコレクションを蓄積 すれば、それらは新しいフリーなプログラムの中で建築ブロックの役割を果た す一群の有用なモジュールを提供してくれるでしょう。これは今後のフリーソ フトウェアの発展の上で大きな強みであり、いくつかのプロジェクトはこれら のライブラリを使うために、ソフトウェアをフリーにすることを決断するでしょ う。大学のプロジェクトは容易に影響されうるでしょう。今日、企業もソフト ウェアをフリーにすることを考え始めており、商業的なプロジェクトのいくつ かすらもこの方法で影響されうるでしょう。

独占的なソフトウェアの開発者たちは、重要な強みとしての自由競争を否定し ようと画策し、ライブラリの作者たちに対して彼らのライブラリをGPLで保護 されたコレクションに寄与しないよう説得しようとするでしょう。たとえば、 彼らは自尊心に訴えかけて、もし私たちが彼らに独占的なソフトウェア製品に おいてコードを使うことを許せば、「このライブラリにより多くのユーザがつ く」と言ったことを約束します。人気は誘惑的ですし、ライブラリの開発者に とってそのライブラリの人気を高めることこそ結局のところコミュニティが必 要としていることだという考えを正当化するのはたやすいことです。

しかし私たちはこういった誘惑に耳を傾けてはなりません。皆が団結すれば、 ずっと多くのことが達成できるからです。私たちフリーソフトウェアの開発者 は他の仲間を支援するべきです。フリーソフトウェアにおける使用に限定のラ イブラリを発表することにより、私たちはお互いのフリーソフトウェアのパッ ケージが独占的な代替品をしのぐ手助けをすることができます。全体としての フリーソフトウェアが競争において優勢に立つので、フリーソフトウェア運動 全体がより大きな人気を得るでしょう。

「ライブラリGPL」という名称はこの問いについて誤った考えを伝えるので、 私たちは名称を「劣等GPL」と変更する予定です。実際に名称を変えるのは多 少の時間がかかるでしょうが、しかしあなたは待つ必要はありません--GPL に よって保護されたライブラリを発表するのは今でもできます。

[追記: 劣等 GPLが現在入手可能です 。]


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翻訳は 八田真行 <mhatta@gnu.org> が行いました。

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Updated: Last modified: Sat Aug 10 16:11:24 JST 2002